「虹の親子と翡翠のメガネ」
 
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「こんにちはーーー!!」
 休日、昼下がりの無限書庫。
 扉が開くと共に元気よく響き渡った声に近くで仕事をしていた幾人かの司書がそちらを振り向く。
 出入り口のすぐ近くで紅と翠、虹彩異色の瞳を持つ少女、高町ヴィヴィオがにこやかに手を振っていた。
「こら、ヴィヴィオ。あんまり大声出したら司書さんたちのお仕事のジャマでしょ?」
 傍にいた母、高町なのはが苦笑と共に娘を咎める。
 はーい、という返事こそ来るものの、ヴィヴィオの視線はお目当ての人物を捜すことに向いている。
 やれやれ、と娘の行動に苦笑しながら、まぁそれも仕方ないかと軽くなのはは溜め息を吐き、手元のバスケットに視線を落とす。
 中には今日という休日を利用して、ヴィヴィオが頑張って作ったクッキーが詰まっている。
「揃ってどうされたんです? 高町一尉」
「いえ、ちょっとした差し入れです」
 近寄ってきた司書の声に顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回す娘になのはは笑いながら、そう司書に返した。
 ヴィヴィオが頑張った甲斐があってか、美味しく出来たので、せっかくだから書庫に差し入れに来たのだ。
 バスケットからクッキーの飾られた小皿をひとつ取り出し、その司書へと渡す。
「ああ、これはありがとうございます」
「ねぇねぇ、ユーノく……司書長は?」
 辺りを見回し、お目当ての人物が見当たらないことに気が付いたヴィヴィオが司書に話しかける。
「司書長? さっき応接室のほうで休むって言ってたから、そっちじゃないかな?」
「応接室? ありがとうございまーす!」
 言うが早いか、応接室のほうへと向かっていくヴィヴィオを見送って、司書がクスクスと笑いを漏らした。
「なるほど。差し入れのお目当ては司書長ですか」
「……ええ、まぁ。上手に焼けたものですから、ユーノ君にも食べてもらいたいらしくって」
 司書の言葉に苦笑しながら、軽く挨拶をするとなのはもヴィヴィオの後を追って、応接室へと向かうのだった。

◆    ◇    ◆

「失礼しまーす♪」
 ヴィヴィオが応接室の扉を開け、中に入るとソファ越しにユーノの背中が見えた。
 先ほど休憩しているとは聞いていたが、応接室の中にはユーノの他には誰もいない。
 静かな応接室の中、声を掛けたのにユーノは気が付いていないのだろうか。
 反応の無いユーノにヴィヴィオはピンと指を立てると、音を立てないように近付く。
「だーれだ?」
 ニンマリ笑いながら、自分の両手をユーノの目の前覆うように被せたが、それでも反応は返ってこない。
「ユーノくん?」
 不思議に思って、手を戻して、ソファの背もたれから身体を乗り出して、ユーノの顔を覗き込んでみたら。
「…………寝てる」
 そう、何をするでもなく、ユーノはソファに腰掛け、背もたれに寄りかかりながら寝息を立てていた。
「むー………せっかく来てあげたのに」
 来るという約束をしていた訳では無いので、ヴィヴィオの言うことは的はずれではあるが、それはそれ。
 自信作のクッキーをユーノに食べてもらいたかったのだから。
「うー………」

 起きぬなら、無理矢理起こそう、ユーノくん。
 少し唸ると、ある意味無茶苦茶な句を立て、少しだけバックしてユーノと距離を取った。

 距離、OK。タイミング、OK。秘技、飛びつき目覚まし。

「ユーノく………!!」
「んあ?」
 声を上げつつ、飛びつこうとしたところで、突如ユーノが目を覚まし顔を上げる。
 直後、応接室の中にゴツンという鈍い音が響いたところで、なのはが追いついて来た。
「えーと………何、やってるの、二人とも?」
 入ってきて早々なのはが見たのは、顎を押さえるヴィヴィオと後頭部を押さえているユーノが互いに悶絶している姿。
「〜〜〜〜〜ったーー もーーー、ユーノくん、急に起きないでよーー!!」
 起こそうとしていたのにそんな理不尽な事を言うヴィヴィオに、ユーノが後ろ頭をさすりながら、振り返る。
「あたたた………あれ、ヴィヴィオ? なのはも………どうしたの」
 来るとは聞いていなかった上に、とんでも無い起こし方をしてくれた珍客にユーノは苦笑する。
「私としては、まず二人がどうしたの? なんだけどね」
 ぶつけた個所をさする二人になのははそう告げるながら苦笑するとユーノとは反対側のソファに腰を降ろした。
 まだ痛むのか顎をさすりながら、ヴィヴィオが回り込んでなのはの隣へと同じように座り、なのはの袖を引っ張る。
 早く早くとせがむようなヴィヴィオに苦笑しながら、テーブルの上にバスケットを置いて、なのはが中身を取り出して置く。
「はい、差し入れ」
「クッキー?」
「えへへ、ヴィヴィオが作ったんだよ! 美味しいんだから♪」
 小皿に盛られたクッキーに視線を落とすユーノにヴィヴィオが立ち上がって、ふんぞり返りながら胸を張る。
「へぇ、どれどれ」
 クッキーを一つ手にとって、口へ運ぶユーノの姿にヴィヴィオが思わず唾を飲む。
 自信はあるけど、ユーノが美味しいと言ってくれるかどうかは別問題だから。
「………うん、美味しい。これなら桃子さんにも引けを取らないんじゃないかな?」
「ホント!?」
「ホントだよ、ありがとう。ヴィヴィオ」
 ユーノの言葉にヴィヴィオが身を乗り出してくる。
 軽くその頭を撫でてやると、実にご満悦そうにヴィヴィオが笑いながら、自らもクッキーをひとつ摘んで口へと運ぶ。
「さすがに褒めすぎだよ、ユーノ君? お母さんと比べたら、私だってまだまだなのに」
 ユーノのひと言にそれは持ち上げすぎだろう、となのはは軽く吹き出す。
 さすがにプロのパティシエである桃子に比べたら、自分たちの作るお菓子では太刀打ちは出来ないのだから。
「十分、美味しいと思うんだけどなぁ……でも、こう美味しいと熱い紅茶が欲しくなってくるかなぁ……」
「そう言うと思って、持ってきてるよ?」
 バスケットから、魔法瓶と人数分のカップを取り出して、なのはが紅茶を注ぐ。
 カップを受け取って、ユーノはまたクッキーをひとつ摘んで口へと運ぶ。
 先ほども言ったことだが、本当にユーノにしてみれば、美味しいし満点を上げてもいい出来だと思う。
 それだけ自信作だったのなら、寝たりしていたのは出鼻を挫いちゃって悪いことしたかなぁと苦笑が漏れてくる。
「ユーノ君、どうかしたの?」
「ああ、いや。何でもないよ。この香りって、翠屋の紅茶?」
 カップに注がれた熱い紅茶の香りに覚えがあった。
 翠屋に行った時、よくご馳走になっていた紅茶の香りだ。
「うん、そうだよ。向こうから送ってもらったの。って、ユーノ君」
「うん?」
 途中から声が笑いが混じりだしたなのはの声にユーノが顔を上げる。
 見れば、ヴィヴィオも何か笑っていた。
 はて、何がそんなにおかしいのかと首を傾げたところでヴィヴィオが口を開いた。
「ユーノくん、メガネ真っ白だよ」
 ヴィヴィオに指摘されて、気が付いた。
 香りに夢中になるあまり、熱気でメガネが曇っていたらしい。
「いまいち格好付かないね?」
 クスクスと笑うなのはに多少複雑な顔を向けながら、メガネを外してポケットから出したハンカチで拭いていく。
 まぁ、別に今更、格好付けるような間柄でも無いのだが。
 そんなユーノを眺めながら、ヴィヴィオがクッキーを手にとって口いっぱいに頬張った。
「ふぇー、ふゅーのふん」
「こら、ヴィヴィオ。物を口に入れたまま喋らないの、お行儀が悪いよ」
 ヴィヴィオの隣に座っていたなのはが、メッと叱るような仕草で咎める。
 言われて、慌てて頬張っていたクッキーを飲み込むヴィヴィオにユーノから苦笑が漏れた。
「で、何だい? ヴィヴィオ」
「えっとね、ユーノくんのそのメガネって、なのはママとフェイトママが選んだって、ホント?」
 たまたまメガネを外して、レンズを拭いていたから気になったのだろう。
「このメガネ? そうだよ、二人が選んでくれたんだ。あれ、いつ頃だったかなぁ……」
「覚えてないのー?」
 呆れるようなヴィヴィオの声に、自分の事だと云うのに、ユーノも苦笑してしまう。
 考えてみれば随分長い間、使っている気がする。
「まぁ、掛ける事になった理由は今でもハッキリ覚えてるけどね」
「ふーん……ねぇねぇ」
「…………聞いても面白い話じゃないと思うよ?」
 興味津々のヴィヴィオ相手に頭を掻くと、ユーノはメガネのフレームを指でさすりながら語り出す。
 ヴィヴィオの隣では、なのはが懐かしそうに笑っていた。

 そう、あれはいつの話だったか。
 確か今日みたいになのはたちは休みで、自分は無限書庫で仕事をしていた日だった。

◆     ◇     ◆

「ユーノくん」
 書庫で仕事をしていたら、突然後ろから声を掛けられ、聞き慣れたその声に振り返る。
「なのは? ……とフェイト、何してるの?」
 振り返った先、書庫の無重力の中、佇んでいたのはなのはとフェイト。今日は休みだし、こちらへ来る予定は聞いていなかった。
 なのはは何となく怒っているような気がするのは気のせいだろうか。
 いや、それよりも気になるのは、なのはの後ろで彼女にしがみつきながら、警戒するように覗いているフェイトだ。
 自分はフェイトを怖がらせるようなことをしたのだろうか……?
 いや、それなら確かになのはが怒る理由も分かるのだけれど。
 何かよく分からない事態に困惑していると、なのはが自分の指を立ててユーノに訊いた。
「突然だけど、ユーノくん。この指何本?」
「えっと、なのは…………いきなり何?」
 訳の分からないなのはの行動に余計にユーノの頭は混乱する。
「いいから、これ何本?」
「…………えーと、四本?」
 とにかく、困惑しつつもなのはにそう答えた。
 見れば普通に数えられるものなのに。何だというのだろう。
 首を傾げるユーノだったが、なのははその様子に盛大に溜め息を吐いてこめかみを押さえた。
 次いで、その口が開かれる。
「ユーノくん、シャマルさんのところ、いこ?」
「へっ? な、何で?」
 シャマルの居るところ。つまりは医務室。
 別に身体に異常は無いはずなのに。
 何故、そんなことを突然言われるか解らないユーノがなのはにギョッとした声を返す。
「この指、何本?」
 再びなのはが指を立てる。
 何度見ても変わりはしない。
「………四本でしょ?」
 ユーノの返答になのはは肩を落としながら、盛大に溜め息を吐いた。
「フェイトちゃん、これ何本?」
「……一本」
 なのはの後に隠れ、ユーノを恐る恐る覗きながら、フェイトがか細い声で遠慮がちに告げる。
「はい…………?」
 フェイトの言葉に目を丸くして、なのはの指を見直す。が、やはり指の数は一本には見えない。
 視線をフェイトのほうへと向けると、フェイトはビクッと肩を震わせ、なのはの背後へと隠れてしまった。
「フェ、フェイト………?」
 何か怯えるようなフェイトの行動にユーノはますます訳が分からなくなってくる。
 自分の背中に隠れるフェイトに溜め息を漏らしながら、なのはが口を開いた。
「ユーノくん、フェイトちゃんが怖がってる理由、分かる?」
「え、あ、えっと………ごめん……サッパリ。僕、フェイトに何か悪いこと……したのかな………?」
 自分が気付かないうちにフェイトを傷つけるようなことをしたのだとしたら、それは謝らなければいけない。
「………ユーノくん、今、自分がどんな目をしてるか分かる? ものすごい、キツイ目つきしてるよ?」
「…………へっ?」
 思わぬなのはの指摘に思わず口から間抜けなひとことが漏れる。
 そういえば、最近、目が霞んで見えることがあったが、ただの疲れだと思っていた。
「ユーノくん、絶対、目が悪くなってるよ」
「そ、そんなことは無いと思うんだけど………」
「じゃあ、フェイトちゃんがどうしてこうなってるの?」
 なのはの指摘にユーノは言葉に詰まる。
 ジロリとなのはに睨まれてしまってはその後は紡げなかった。
「ここ最近、クロノくんからの依頼とかで、ユーノくん、ちょっとご機嫌悪いのかなって、思ってたんだけど………少し違ってたね」
「………少しじゃないと思う」
 なのはの後ろから、フェイトが顔を少しだけ覗けると、そう告げてまた引っ込んだ。
 ―――そんなに今の自分は目つきが悪いのだろうか。フェイトの行動にユーノは思わずショックを受ける。
「………ねぇ、フェイト。……僕の目つきが悪いって思ったのいつ頃?」
「最初はひと月位前からだったけど……絶対、おかしいって思ったのは、ついこの間だよ………」
 そういえば、先日、廊下でフェイトに声を掛けられて振り向いた時、えらくフェイトがビクリとして立ち止まったことがあったのを思い出した。
 急用でも思い出したのか、慌てて挨拶だけして、走っていたフェイトに首を傾げたことがあったのだが、あれが、そうだったのだろうか。
 確かにあの時、一瞬、フェイトの姿がぼやけて凝視するような眼を向けたかもしれない。
 ………と、なると。その他にも思い当たることが山ほどあるような気がしてきた。
「…………なのは」
「えーとね、まず、はやてちゃんにヴィータちゃん。後、シグナムさんも言ってたかな。ユーノくんの機嫌が悪そうだけど、何かあったのかって。それと………」
 ユーノの言わんとする事は察したのだろう。すぐになのはは指を折りながら、ユーノの周りにいる人物の名前を挙げていった。
「ちなみにクロノくんに聞いたら、あいつの機嫌が悪いのはいつもの事だろうって、言ってたので、数に入れてません」
 まぁ、事実、クロノと会う時は大抵無茶なお願いが飛んでくるので、ユーノはいつも機嫌が悪い。
 それを置いたとしても、ここ最近ユーノに会った人物ほぼ全員が同じ感想をユーノに抱いていた。
 更に困ったことに、その中で医師であるシャマルだけが、ユーノに会っていなかったのだ。
「ユーノくん、シャマルさんのところ、いこ?」
 なのはにもう一度、言われ、もうユーノには頷く以外に無かった。
 どっちにしても、このまま放っておいたら、更に目つきが悪くなりそうだし、フェイトに怖がられ続けてもユーノとしては敵わない。
「……というか」
「ヴィータちゃんが、怒り出さなくて良かったと思うよ?」
 言おうした言葉を先になのはに紡がれ、ガックリとユーノは項垂れる。確かになのはの言うとおりである。
 あまり睨むような目つきでいたりしたら、ヴィータから喧嘩売っているのかと、愛用のハンマーが飛んで来かねなかった。
 視力検査のついでにタンコブの治療も受ける羽目にならなかったのは、ある意味、不幸中の幸いだったのかもしれない。
 こういう場所での仕事という性質上、視力の低下も仕方ないと思いたかったが、よもや友人達に心配を掛ける羽目になるとは。
 そう思うと、ユーノは盛大に溜め息を吐くのだった。

◆    ◇    ◆

「………なんて事があっただけ。聞いてみれば、面白くもない話でしょ?」
 話し終えたユーノがヴィヴィオのほうへ顔を向けてみると、案の定、ヴィヴィオはやや呆れた顔をユーノに向けていた。
「でも、あの時のユーノ君、ホントに目つき酷かったよー? 今でこそ笑い話で済ませられるけど、フェイトちゃんホントに怖がってたんだから」
「言わないで、なのは。一応、あれは反省してるんだから……」
 クスクス笑いながら、そう言ってクッキーを口に運ぶなのはにユーノはバツが悪そうに苦笑する。
 あの後すぐに検査してもらって、メガネを作ることになり、その際になのはとフェイトに選んでもらったのが、今も使っているメガネだったりする。
 選ぶ時、色々と二人に遊ばれたが、結局はユーノの希望を組んで、とにかく頑丈なフレームという事で決着が付いた。
 その希望から作られたフレームは発掘に持っていっても壊れないところは確かに頑丈だった。
 とはいえ、いくら頑丈でもメガネはメガネ。やはり使っていると度が進んだり、レンズ自体が傷んだりという事はある。
 二人がプレゼントしてくれたものだから、大事に使っては来たが、それでも長年の使用でフレームなどにも傷みが来ていた。
 ちなみにレンズ自体は幾度か交換してはいる……主に近眼の進行で。
「でも、そのメガネも大分くたびれたよね? ……大事に使ってくれるのは嬉しいけど、そろそろ作り替えない?」
 今でも大事に使ってくれることはなのはたちにしてみれば、嬉しいことではあるが、さすがに使い込みで傷んでいる分、やはり見た目という点ではあまり褒められる状態ではなかった。
「うーん………でも、まだ使えないってレベルでもないしね」
「てい」
 キズを確認するようにメガネを天井のライトに翳していたら、不意に横から出たヴィヴィオの手にかっ攫われた。
「ヴィヴィオ?」
「えへへー」
 ニンマリ笑うと、ヴィヴィオはユーノのメガネを掛けて、二人の前で気取ってみせる。
「どう、似合う?」
「あはは、なかなか似合うじゃない、ヴィヴィオ」
「確かに」
 なのはがそんな感想を漏らすとユーノも苦笑しながら相づちを打つ。
 ヴィヴィオ自身はいかにも活発そうな少女、という外見だが、やはりメガネというものは付けると違って見えるのか。
 真面目で大人しそうな文系少女に見えるから、不思議なものである。
「うぁ………でも、これクラクラするー………」
 耐えられなくなったのか、そう言って、ヴィヴィオがメガネを外すとユーノへと手渡した。
 メガネの必要ない常人の視力で掛ければ、そんなものである。
「まぁ、僕の度にあわせてあるからね……」
「ふふ、やっぱりメガネ付けてると、ユーノ君、ひと味違うね」
 苦笑しながら受け取って、メガネを掛け直すユーノになのはが楽しそうに笑った。
「………暗に童顔って言わないで。お願いだから」
 なのはにしてみれば、そんな気は無いのだろうけど、ユーノとしてみれば、気にしていることだった。
 メガネが無いと、未だにどうしても童顔で女性に間違えられる時すらあるのだ。
「ねー、ユーノくん。この指何本?」
 ヴィヴィオがイタズラっぽい笑顔を浮かべながら、そんなことを言って右手の指を立てる。
 さすがに裸眼じゃないんだから、とユーノから苦笑が漏れた。
「ははは、メガネ掛けてるし、さすがにそれくらいは分かるよ。三本でしょ?」
「三本?」
 ユーノの言葉にヴィヴィオは自分の指へ視線を落とした後、なのはのほうを見る。
 なのははというと、ヴィヴィオの指を見ながら、盛大に溜め息を吐いていた。
 ヴィヴィオの立てている指の数は二本だった。
「………ママ」
「ええ」

 二人は顔を見合わせた後、こう言った。


『ユーノくん、シャマルさんのところ、いこ?』


 後日、高町親子ならびにフェイトまでやって来て、レンズとついでに新しいフレームに変更されることになり、選ばれる際にあれこれ付け替えされてオモチャにされた司書長がいたとかいなかったとか。






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